MTB担いで富士登山 2001/8/13〜14決行

いきさつ
私は昔から高いところが好きで、そのため富士山のように日本一高い山は大好きで、アメリカに赴任する前(7年くらい前)には8回くらい続けて毎年登っていました。
赴任してMTBを始めてからは、その走破性の高さと路面へのインパクトの低さ(バイクと較べて)担げば基本的に歩行者扱いになることなどから、帰国したらいつか富士をMTBで下ってやると思うようになりました。

そして今年(2001)なぜか急にその気になり、実行に移したわけです。

今回のコースは登りは最短距離の富士宮口から、下りはブル道または段差が少なく下山道(砂走り)があり且つ宝永火口経由で富士宮口に戻れる御殿場口としました。

←富士宮口水ヶ塚駐車場で、輪行準備してるとこ

富士宮口5合目へ
8/13の朝5時に起きて常磐道、首都高を抜け、調布の友人K(昔のバイク仲間で今は時々ダウンヒラー)を拾い、渋滞のため厚木から乗った東名経由で、富士宮口水ヶ塚駐車場についたのがAM10時近く。
マイカー規制のためここからバスに乗りますが結構な行列で、輪行袋に入れたMTBを持ちこむのはヤバそうだなと話していたところ、ちょうどタクシーの呼びこみに声をかけられ、バスの2倍の料金(一人約2000円)で5合目へ。

登り

ここからはMTBを輪行袋(会社のFさんから借りました)から取りだし、ジョイフル本田で買った38mm幅のナイロンベルトをDカンを用いてフレームにとりつけ、デイパの後ろに背負います。(←会社のSさんのアイデア)

AM11時に登り開始。歩行者に気を使いながら「すいませ〜ん。前通りま〜す!」とか、相手がよけてくれたときには「すいませ〜ん。ありがとうございます!」と、つとめて明るく挨拶してMTB乗りの地位を下げないようにするのは忘れません。

←5合目駐車場にて、MTBを背負子仕様にしてるとこ

いつもは楽ちんな新6合までのゆるい登りでさえ結構きつい。でもすれ違う多くの人々が「それ何キロあるんですか?」とか「自転車持っていってどうするんですか?」とか「どこをおりるんでか?」とか素直に驚きの声をかけてくれて、最後にはみな「頑張って下さい。」と言ってくれたのがすごく励みになりました。
私はてっきり他の登山者からは邪魔者扱いされると思っていたので、このポジティブな反応にはとても励まされ、それはずっと頂上まで続きました。
さて7合目付近のジャリジャリの登りになると、MTBの重みは肩を締め付け、足は重く軽い頭痛さえしてきました。私はあまり高山病にはなりませんが、なるとしても8合目以上でなります。前夜は家内と「AI」を見にいってしまい、3時間半しか寝てないので、睡眠不足+重い荷物のダブルパンチがきいているようです。

7合目付近で雲海をバックに7-11弁当の昼食。今日はいい天気!ごみは全部フレームにくくり付けて持ちかえりました→

普段運動してないはずの友人Kは私よりペースが早く、MTBでクロカン+自転車通勤やってる私が、付いて行けないのがかなりショック。
でもペースが上がらんもんはどうしようもないので、数歩進んでは休むを気の遠くなるくらい繰り返し何とか8合目着。

←こんなとこをもくもくとひたすら、ただひたすら登ります

そのころにはKもバテ気味で、地面のくぼみに横になって眠りだした。
私はすばらしい雲海を見下ろしながら写真を撮り、30分くらい経ったころでしょうか、頭痛がとれて高地順応出来てきたようです。ラッキー!通常8合から上がきついので、高山病の症状をかかえてMTBも背負ってだとかなりやばいかなと思っていたので助かりました。
そこからはペースをつかみ遅いながらも9合目を過ぎ9.5合に到着。本当は8合目から空いてる御殿場口に行く予定がボケてたせいか分岐点を見逃し、そのまま富士宮口を登り続けていたのでした。
時間はまもなくPM6時で、食事をとるためには6時には山小屋に入る必要があるので、今日は9.5合で断念し泊まることに。
9.5合小屋
チェックイン時に「荷物ここに置いてもいいですか?」とかなり控えめに言いながら
MTBを軒下に寄せると、恐らく自分では木村卓也似と思っているであろう小屋のスタッフに「自転車で下ったら罰金だよ。」といきなり先制パンチ。しかたなく私「でも私はブル道下りませんよ。」、
キムタク似「あっそう。でもみんなブル道下っていやな思いしてるから。」、
私「いやな思いって転倒とかですか?」、
キムタク似「そうじゃなくて、すっごく怒られていやな気持ちで帰ってるから。」、
私「そうだったんですか。私はお鉢まわってから御殿場口の下山道に抜ける予定です。ブル道は小屋の物資を運ぶための道ですものね。ところで、ブルって何時くらいに上がってくるんですか?」、
キムタク似「8時くらいから上がってくるかな。」と、教えてくれた。
なんだいいやつじゃん。

↑9.5合目から見る影富士と超おいしそうなブル道

夕食は小食の私にも量の少ないカレーで、だめもとで小屋のおばさんに「おかわりありますか?」と聞くと「ありません。」ときっぱり。しかたないので、おかわり自由のお茶で腹を紛らわす。
食事後はフリースとカッパを着込み外に出ると満天の星空。今日はペルセウス流星群極大日の翌日なので、9.5合の空の暗さと合わせてかなりの流星が見られるだろうと期待していました。
外にいた同宿の二人組と「なかなか流れないですねー。」などと話しながらくっきり見える天の川を眺めていると、いきなり流れた!それもかなり明るく長いやつ。
火星よりはるかに明るかったので恐らくマイナス等級で角度にして90°近い長さ。でも痕はなし。今まで見た中でも最も長い部類だろう。二人組も「きゃー流れた!流れた!」と大はしゃぎ。その声を聞きつけて小屋の他のお客もでてきた。
けれどもその後は消灯時間のPM8時まで15分ほど待っても一向に流れないのであった。流れ星とはそんなもの。

明日のMTBアタックのために床につく。恐らく全然干していないであろう布団は湿ってずっしりと重く、肩まで覆うとつま先が出て、つま先を覆うと肩が出てしまって丸まって寝ないと寒い。
一体どんな身長の人に合わせた布団なんだ。(私は170cm)
しかも右隣のおやじと左後ろのおやじのいびきがかなりうるさく疲れているはずなのに全然寝つけない。しかも直ったはずの頭痛までしてきた。眠れないものはしょうがないので今日1日の登りを思い出しながらゆっくりと深呼吸して眠るのを待つ。

朝はAM3時に明かりがつきほとんどの人が起き出した。あまり寝た気がしない私は
御来光は無視で寝る努力を続ける。Kは寝たまま微動だにせず。図太いやつめ。
「日が昇った。」の声を聞き、AM5時に起きだし外にでる。上空は雲一つない快晴に
御来光。
反対側には影富士が見える。すごいラッキーないい天気。
Kを起こして小屋から受け取った、おかずのさえない朝食弁当を食べる。

頂上へ
いよいよ頂上へ向けて最後の登りです。御来光帰りの人が多く、やり過ごすのにかな
り長い休憩。
とどめの登りは狭い石段なので、自転車背負ってるとすれ違いはできません。
ただ今日はほんとに天気がよく、昨日の雲海とは違い、愛鷹山や西伊豆、天城や箱根、
駿河湾が一望のもと。
この石段さえ登れば頂上だという思いと、よくぞここまできたという思いが交錯する。

一歩一歩石段を踏みしめ、鳥居をくぐり浅間神社前に到着。やった−、あとは馬の背
を登れば測候所のある日本一標高の高い剣ヶ峰だ。

滑りやすい馬の背の急斜面を登りきり頂上到着。

なんだかやけに誇らしい気持ちでニコニコしながらMTBを組む。「へーそんなに簡単なんですか。」見物人が不思議そうに見ていた。
昨日9.5合からさらに上を目指していった2人組とも再会し、写真をとったりコーヒーを入れたりして、のんびりと日本一高い場所の時間を満喫する。静岡出身の彼らは、富士登山ははじめてだそうだ。

待望のMTBラン
1時間半は休んだだろうか。いよいよ待ちに待ったMTBランの始まりである。このために12kg以上ある自転車をエッチラオッチラ担いできたのだ。

まずはお鉢めぐりを右向きにまわる。走りだしは道幅の十分なフラットダートで、右手に火口をチラッと見ながら軽快に飛ばす。
登山者がいるとこだけ減速して「すいませ〜ん。右通りまーす。」と声をかけ、あとはノーブレーキで上り坂まで一気に走る。

後でメータを見ると37.5km/h出ていて今回のダートでの最高速であった。

ゆるい登りでも標高が高いせいで息がきれしんどい。けどお鉢は思っていた以上に乗っていける。右に火口、左に雲海を見ながらまさにMTB乗り至福のランだ。
これぞ最高のロケーションのクロカンコースである。
すばらしい!生きてて良かった!って感じである。

←頂上をバックにその最高のローケーションで、ウイリーを失敗してるとこ

急な下りのセクションは登山者をやり過ごし、去年の岩岳DHコースで練習した、腰をシートより後方に引いたフォームで、石をよけながら慎重に下る。

尾根筋では転ぶと奈落の底まで転落しそうだし、自転車乗りがコケているところを一般登山者に見られると、MTBは危ないと思われてしまうからだ。

登りセクションはきついが、普段通勤用のカットスリックタイヤ(スペシャのヘミスフィア)で筑波山のトレールを走っているので、今回はいてるオンザリップのブロックパターンはかなりグリップがよく感じられる。
そのためリアタイヤがスリップする前に、乗り手がしんどくなってMTBから降りてしまうケースが多かった。

登りがゆるくなって再スタートし、平らになったところが吉田口からの合流点。
今までの人気の少なさから一転してみやげ物屋の連続と登山客の大群である。
声をかけながらゆっくり走る。みやげ物屋を抜けると再び登りセクション。
このあたりから若者のグループと抜きつ抜かれつになった。MTB乗りとしては出来るかぎり乗っていきたいので、登りの途中で止まった場合などに長く休んで呼吸を
整えるので結局歩きと同じスピードなのだ。
反対側の頂上をバックに、シャッターを押してもらう。

決断
崖の横を抜け、滑りやすい板を敷きつめたトレールを例の腰引きフォームで下り、御殿場口の上に到着。

さてここで重大な決断をしなければならない。それはどこを下って富士宮5合目に戻るかということである。
この場所は小屋のにいちゃんに下ると公言した御殿場口であるが、さすがに傾斜のゆるめな御殿場口でも、降り口は段差が多く乗れそうもない。
ブル道なら確実にしかも楽しく乗っていけるのはわかっている。かなり魅力的であるが、お鉢めぐりですでにかなり満足できていたので、イリーガルなブル道でなく、御殿場口を乗れるとこまで担いで降りるのも手だ。

 

Kと相談し、とりあえず馬の背下のブル道スタート地点まで行って見る事にした。

Kは浅間神社前の溶岩の段差下りでフロントがささって前転。ちょうど横にさっきの若者グループがいてうけていた。私は直線的なラインで腰を引いて慎重にクリア。
鳥居の前でフロントアップして観客にアピール。(←何をだ?)
この先当分食い物にありつけるとこがないので、頂上富士館で800円も払ってカップラーメンを食べる。なんか損した気分だけど悔しいことにそれなりにうまい。

ブル道スタート地点で「通行禁止」の札の付いたロープの前でしばらく悩む。
7年前にはここにはロープはなく、9.5合までの下山道として何度も歩いていたので路面はフラットで、登山道を担いで下るよりはるかに安全で楽しいのは良く知っている。
形勢はKはブル道行っちゃえ派で、私はどっちかといえばやっぱやめよっか派である。
そうこうしてるうちにさっきシャッターを押してくれた人が通りかかった。
彼女いわく「自転車で富士から下るなんてすごいチャレンジですね。なかなか出来ることじゃないですよね。がんばって下さい。」その一言で決心がついた。もうこんなこと出来ないのだから、怒られようがなんだろうがブル道を下れるのは一生のうち今日だけなのである。

ダウンヒル
彼女に別れを告げ、Kといっしょにロープをくぐる。そこはまさしくダートワンダーランド
であった。走りやすくスピードの乗るストレートはとても快適で、一気に高度を落とせる。
つまらなく疲れる石段とは大違い。「ざまーミロっ」と叫びながら走る。

あっという間に9.5合で富士宮登山道と合流。再びロープの前に立つ。この先は9.5合小屋をはじめ、登山道から丸見えの区間だ。今ならまだ富士宮口を担いでおりることも可能だが、真っ平ごめんであるので、再びロープをくぐる。
3、4回ジグザクにターンして快適に下っていくと、下にブルが止まっているのが見えた。
ヤバイ!すかさずMTBを山側に倒し、身を隠す。
キムタク似が言っていた「やな思いをするくらい怒られる。」が頭をよぎる。
ほふく前進しながらブルを確認すると9合小屋で荷物の積み下ろしをしていた。
マズイ!ブル道は9合小屋の真横を通っているし、もしあのブルが登ってくると逃げ場がない。

しかも今身を寄せている場所は、「ブル道は走りませんっ」と大嘘ついた9.5合小屋から情けないほど丸見えである。

Kは強行突破論を唱えるが、私は昔バイクに乗ってたころ中央アルプスの立ち入り禁止の林道で、関係者の車と鉢合わせになり、アクセルターンに失敗して転倒した苦い記憶が脳裏をよぎりました。

ただ非常にラッキーなことに快晴だった天気は下り坂で、下のほうでは時々ガスも漂ってきた。
あのガスさえのぼってきてくれれば、ブルからも山小屋からも全く見えなくなり、なんの問題もなく下れる。その時を待つこと恐らく5分ほど。神風が吹いた。
ガスがあたり一面に立ち込めたのを確認し、一気に下る。
途中で御殿場口のブル道に入り、御殿場口登山道に合流。

ここからはイリーガルな道ではないので、めちゃめちゃほっとしました。
ただコースはブル道よりはるかにテクニカルで、砂利にゴツ石をばら撒いたタイトターンの連続です。

思わずフロントブレーキを掛けすぎてしまい何回か転倒。
そのうち一回はロープを超えて谷側に放り出されてしまいました。その後はビビリが入ってしまいペースがつかめず、Kには離される一方。

何とか8合目小屋に到着。300円のトマトジュースを飲んで気合を入れなおす。

そして楽しみにしていた砂走り下山道を下るがフロントをとられてうまく走れない。
ふとリアタイヤを見ると目いっぱいブレーキをかけているはずなのに全然ロックしていない。
このせいだっ。いつのまにか左手の握力がなくなってたのだ。
リアブレーキを指一本から2本がけにしてフロントはノーブレーキで腰を引くと、面白い位に安定する。あまりに快適なので、そのままガスの中を一気に下る。
しばらく下るとガスが晴れ、宝永火口への分岐を通り過ぎていたことに気が付いた。
仕方なく宝永火口の斜面をバイクを押し上げながら登る。砂の登りは一歩進んで半歩戻る状態である。めちゃめちゃきついがこの辺りの標高は2700mほどなのでもう高山病の心配
はない。
30分はたっぷりとかけ、火口の縁に到着。アイゼンを履いて登ってきたおじいちゃんと話をする。
ここから宝永火口めがけてダウンヒルです。最初はゆるかった斜度もだんだんきつくなりフロント当てたら転倒しそうなゴツ石をなんとかよけながら下る。
何度か転倒しながら火口を横断し、登りにはいる。ここは結構長く、休み休み登っていると結局さっきのアイゼンおじさんに追いつかれてしまった。

縁まで登り振り返る。宝永火口はほんとに大きい。よくこんなとこ走ってきたという気がする。でもほんとは岩岳ダウンヒルコースのほうがもっとずっとすごいんですけど。

ゆるいアップダウンを繰り返し富士宮新6合目に到着。ここからは人気のなかった御殿場口や宝永火口とちがい、ひさびさの人の大群。
登山客を避けながら慎重に下り5合目到着。やったー下りきったー!

久々に何かを達成した満足感を味わいました。Kとアクエリアスで祝杯。

<データ・ダート>
走行距離:9.7km
最高時速:37.5km/h
平均時速:忘れました
実走行時間:同上
ロードのダウンヒル
5合目を下るころには雨が降ってきたので、カッパの上のみ着込む。
ブロックタイヤを履いているし、路面は濡れていたので、あまりバイクをバンクさせずコーナリングスピードを抑えて下る。それでもKに追いついてしまったのでコーナーの立ち上がりで抜き去る。
自転車とは言え、久々の二輪車でのワインディングはワクワクする。
バイクに乗っていたころの感覚がよみがえる。タイヤの絶対的なグリップでは劣っても超軽快なハンドリングでラインの自由度は相当高い。

コーナーのアウトからリアブレーキを残したまま進入し、出口が見えたら一気にブレーキ解除+漕ぎを入れる。そうこうしてるうちにバスに追いついてしまった。Kは排気ガスに我慢できず、コーナーの進入で無理やりバスを抜き去る。なんだこいつの自転車の乗りかたバイクと少しも変わっとらん!凶悪だなあ。

5合目を出る時、先に出たバスの中から頂上で再会した女性2人組が手を振っていたので、このバスに乗っているはずである。
MTBの印象を悪くしないように、しばらくバスの後ろでチャンスをうかがう。
バスの中から子供が見ていたのでこれまたMTBイメージアップのために手を振る。
これであの子も将来MTBに乗るに違いない。
緩い右コーナーで対向車がいないのを確認し、直線的ラインで一気にバスを抜く、、、
つもりがやはり人力、じわじわと抜く。追い越しざまには運転手に手を上げて挨拶。
その後も気持ちよく飛ばし次のバスに引っかかっていたKを抜き、バスも抜き、さらにもう一台バスを抜いた。合計3台抜き。自転車は富士位の傾斜の下りではバスよりずっと速いのであった。

水ヶ塚駐車場までなんとか逃げ切り今回のチャレンジは終了したのでした。Kは登りでバテて結局バスに抜かれてました。

今回は天気にめちゃくちゃ恵まれ、タイミングよく現れ去る霧にも恵まれ、登山客にも励まされ、ほんとにラッキーの連続でした。
もうやらないとは思いますが、昔からずっとやってみたかったことが実現できてほんとうれしいです。応援して下さった方々ありがとうございました。
本当にはげみになりました。
<総合データ・ダート+ロード>
走行距離:27km
最高時速:63km/h
平均時速:14km/h(休憩除く)
実走行時間:1h52m