なぜJetta GLXにしたのか? 

Why the Jetta GLX?  


これはまず、日本車が世界一と信じて疑わなかった私と、VWとの出会いから語らなければなりません。

95年の9月にバルセロナに世界2輪ロードレース選手権(WGP)を見に行ったときに借りたレンタカーが、VWのスペインの子会社SEAT(ずっとシートだと思ってたらセアトと読むらしい)のIBIZAという車でした。当時Yナセの高価格戦略のせいか、VWが元々は大衆車だったとは少しも知らず、お金持ちのぼんぼんが乗る車、位しか認識がなく興味も全然ありませんでした。「シート?何だそれ?プジョー306に乗りたかったのに。」と、少々がっかりしながらキーを受け取ったものでした。

ところがです。たった1.4LしかないVW製の4気筒エンジンは「えっ、これほんとに1.4Lかよ。」って思うくらい気持ちよく吹けあがるし、クラッチは軽く、なんと言ってもギアがこれ以上はないって言うくらい気持ちよく決まるのです。

ファントゥドライブとはまさにこの事で、エンジンの吹けがいいこともありシフトダウンは回転があわせやすく、排気音もかなりその気にさせてくれました。ワインディングの石壁際(日本にあるような鉄製の不細工なガードレールは欧米には少ないのです)を走るときにはやたらと小刻みにギアを変えて、走りと共に石壁に反響した排気音を楽しみ、幸せなドライブができたものでした。

当時の愛車、北米仕様レガシー2.2Lセダンのダルなエンジンに半ばあきらめを感じていたのと、車がないとかなり不便なNY郊外に住んでいたので、そろそろ家内用に2台目の車を、と考えていた私は“次の車はVW“と心に決めたのでした。

北米のA3車のエンジンには、2L直列4気筒 115PS(形式:ABA、2バルブクロスフローのエンジンです。日本に導入されてるADY等の2バルブカウンターフローとは異なります)と2.8L 狭角V型6気筒 172PS(VR6:形式AAA)の2種類がありました。2Lを試乗したら加速がレガシーとあんまり変わらなかったので、もう試乗なしでVR6に決めました。(実は試乗を申し込んだけどディーラーがVR6を用意しなかった)そしてGolfでなくJettaにした理由は簡単、セダンが好きだからです。

理由をちょっと説明しますと、私は星見が好きで、望遠鏡やら赤道儀やらカメラやらを車に積んで星見に行ったりしますが、綺麗な星を見ようと思ったら人里はなれた山の上に行くのが最も手っ取り早く、そしてそういうところは夜は夏でも寒く、冬はメチャメチャ寒いのでありました。

SEAT IBIZA CLX in Southern FRANCE

まさに私の車に対する価値観を変えてしまった車でした

SEAT IBIZA CLX in Andorra

スペインとフランスに挟まれた小さな山国にて

当時父の三菱ギャランバン(今で言う5ナンバーワゴンですね)を借りて、リアタイヤに鉄チェーンを巻いて(FRでした)西富士の林道を登ったりしました。で、何が言いたいのかというと、バンだと荷物をとるためにリアハッチを開けるたびに室内の少しは暖かい空気が全部逃げて、外の-12℃くらいの寒気が入ってきてしまい、えらい寒い思いをしたものでした。そしてセダンだったらいくらトランクを開けても室内は暖かいんだろうなあと、バンを買った父を自分勝手にうらめしく思ったものです。これが私の脳裏に幼児体験のごとく深く刻まれ、“セダンはいい車、バンは寒い車”と言う価値観を植え付けてしまったのです。(車を運転してたんで、もう幼児ではなかったはずですが)

また走りの面でも、左右のリアショックユニット上部のマウント部をつなぐように金属のバルクヘッドが収まるセダンは、リア回りの剛性が同一車種のハッチバック/ワゴンより高く、またスピーカをリアシェルフに取り付けると、トランクをスピーカボックスとして利用でき、自然な低音が出しやすいというメリットもありました。これがGolfでなくJettaを選んだ理由です。

リアのオーバーハングが長く、トランクスペースを稼いでいるのがわかるでしょう。

ホイールベースはGolfと同一で2475mmです。現代の水準ではやや短めなほうでしょうか。

'99.0 Jetta GLX with '95 Genuine BBS Wheels

サスを換えて、レストアしたBBSホイールをはいています。99/8/29にLong Island NYで行われたVW Drivers Fest'99に行く前に撮ったショットです。

VWのA3車は、(A1〜A4通していえる事だけど)サスは前:ストラット/後ろ:トーションビームで、FF車として極めてオーソドックスな構成な上に、エンジンも基本的にOHCの2バルブです。(GTI16VとA4が積んでるAudi製の5バルブ1.8L DOHCエンジンは除く)マルチリンクサスや、DOHC4バルブが主流の日本車と比べると何もメカ的には凝ったところがなく、ローテックと言ってもよいでしょう。

但しそれは悪いことではなく、車の基本的な性能に対しては決して手を抜いてはいないことを感じさせてくれる車です。コストの高い凝ったメカを採用せずコストを下げ、その分例えばブレーキには十分な大きさのローターを与えたり、カムはベルトでなく耐久性のあるチェーンで駆動したりしています。(VR6)その辺りがVW社のポリシーなのでしょう。(いい方向に解釈しすぎですかね)でも乗って正解でした。このせちがらい世の中で、なんかこう、背伸びをしないゆとりを感じさせてくれる車なのですよ。

226mm Rear Brake Disc

288mm Front Ventilated Brake Disc

このフロントディスクのでかさ故、GLXは15インチより小さいホイールははけないのでした。           

VR6エンジンは、国産ハイプレッシャーターボ280ps軍団と較べたら100ps以上も最高出力では劣ります。ところがその余裕のトルクと、とんがり過ぎない(一般ドライバーにとって鋭すぎないレスポンス)特性が、長距離ドライブでのゆとりをもたらしてくれます。

全長4.4m、全幅1.695mの5ナンバー枠小型ボディがもたらす室内は、広々ではありませんがそこそこの空間があり、狭い道ではその大きすぎないボディが、逆に運転のゆとりにつながります。

まとめると

  • 全長わずか4.4mの5ナンバー枠小型ボディに2.8リッターVR6エンジンを積んじゃってて、それが動力性能だけでなくいろいろなシチュエーションでゆとりをもたらしてくれること。

  • どこから見てもVWな独自のデザイン。

  • 2000rpm以上でのVR6エンジンのトルク感(極低速はけっこうトルク感薄いんですけどね)

  • パワーにちゃんと見合ったブレーキのきき。

  • ポーレンフィルターが付いてる。(今でこそポピュラーですが、花粉症の私には本当にありがたい)

なんか乗るとほっとするんですよね。でも単に落ち着くと言うのとはまたちょっと違った華があると言うか。

AE86レビンに乗ってた頃の振り回したるでーってほどの高揚感はないですし、(そんなウデもないですが)プリメーラのハンドルを切れば切っただけ曲がる信頼感ともちょっと違いますし、でも99年中までのってたレガシー2.2L (5MT)にはちょっとだけ似た感覚がありました。こうシートに座るとちょっと安心するという感じで。この車、雪道は最高でハンドリングは良かったのに、とにかくパワーがなく回転の上昇もダルで、華は全くありませんでしたね。(あくまでノンターボの北米仕様レガシーのことですよ!)ブレーキもあまりきかなかったですね。

私も年とともに車に求めるものが変わってきたようです。AE86は文句なく運転していて刺激的で楽しいくるまでしたが、とにかく長距離、特に雪道の運転には疲れはてました。リアタイヤにチェーンを巻いて、下り坂のコーナー入り口でのブレーキングは結構冷や汗もんでしたね。荷重のかかるフロントは夏タイヤのトランピオ4Dでしたから。

今までのってきた4台の車は今でも好きですが、私にとってのthe Bestは間違いなく快適でそこそこ速いJetta GLXです。

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